課題図書がきらい

巷の小中学生は夏休み真っ盛り、夏休みといえば定番の宿題に読書感想文というのがあったなぁと思い出し、課題図書のことを思い出しました。
夏休みに入る前に「今年の課題図書はこれだ!」てなプリントが配られ、できれば読書感想文はその本を読んで書くようにと先生に言われた記憶があります。今でもこの制度は活きてるのかしらんとネットで調べてみると……ありましたありました。2017年度課題図書が告知されています。どんなのがあるのかちょっと覗いてみましょう。
ばあばは、だいじょうぶ
 認知症になったおばあさんと家族とのふれあいの物語
なにがあってもずっといっしょ
 ペットと飼い主の心の交流の物語
すばこ
 巣箱の歴史や利用方法を学べる本
耳の聞こえないメジャーリーガー ウィリアム・ホイ
 実はに基づく伝記的な物語
空にむかってともだち宣言
 今の児童生徒の周りにはさまざまな国からいろいろな事情を抱えた外国の子どもがいる。そんな彼らに国際理解を促す本

 うーん、40年前に比べるといくぶん多様化はしているような気はしますが基本的に傾向はあまり変わっていないみたい。やっぱり僕は課題図書というのはきらいかも。
 読めば面白い本もたくさんあると思うんですよ。僕が小学校の頃もそうでしたし、そういう意味では僕が嫌いな理由は作者さんに責任のあることではないといえると思います。作者さんは真摯に作品と向き合って筆を執っておられると思います。なら、何がいやだったのかちょっと考えてみました。
人から読めと言われて読まされるのがイヤ
 僕は本に出会いを求めるタイプです。図書館や書店でふと手に取った本。その瞬間、ビビっと心に電気が走ってその本から目が離せなくなる。僕はこの本を今すぐ読むべきだと心が命ずる。そんな運命的な出会いを大事にしたいタイプです。読んでみると大して面白くもなかったり軽佻浮薄な物語だったりすることもありますがそれでも自分が選んだということに拘りたいのです。
選者の「ためになるでしょ」と言わんばかりのドヤ顔が目に浮かぶのがイヤ
 何も道徳教育に役立ちそうな本ばかりが選考されているわけではないのはわかっています。けど、子供の科学的理解を促したり、社会情勢に対する理解を促したりなんだかお説教臭さが透けて見える気がするのです。小学生の頃もそう感じていましたが、五十過ぎのおっさんが今年のラインナップを見ても同じように感じました。繰り返し言いますがこれは作者の責任ではありません。本の与え方の問題だと思います。
選考が教育者視点に偏向していて、読者視点が軽視されているのがイヤ
 全ての歴代課題図書をリサーチしたわけではありませんが、おそらくはライトノベル的な本が選考されたことはないんじゃないでしょうか? あるいは絶海の孤島で血まみれの連続殺人事件が起きるようなミステリー、手に汗握るタイムトラベル、思春期の恋物語なんて本が選ばれたこともないんじゃないでしょうか?(選ばれたことがあったのならごめんなさい)
 インターネットが発達した現代は読者が気軽に人気投票ができる仕組みができあがっていて「この✕✕がすごい大賞」といった読者視点で選考される文学賞が数多あります。その上位に選ばれたものはまず間違いなく面白く、本好きの読書欲を満たしてくれる作品群です。省みて課題図書に選ばれた本がそういったランキングに喰い込んでくることは失礼ながら皆無なんじゃないかな。
 この違いはどこから生じるかというと選考基準が「読んでためになるかどうか」を重視していて「読書欲を満たすかどうか」という読者視点を軽視しているからだと思うのです。

 僕が読書をするのはその本を読めば何かためになることがあるからではありません。純粋に本を読んでわくわくしたいからです。その本からなんの教訓も得られなかったとしても、最後のページを閉じた後に物語の続きに想いを馳せて想像を膨らませる至福のひとときがあればそれで十分なのです。
 課題図書の選考基準は以下の6つなのだそうです。
(1)児童生徒の発達段階に適合しており、楽しい読書体験が得られるものであるか。 
(2)現代の児童生徒の思考や心情に適合し、多くの児童生徒に興味や関心を持たせることができるものであるか。 
(3)児童生徒に深い感動や新たな認識をあたえ、豊かな心の成長が図れるものであるか。 
(4)内容や主題に独創性があるか。またその取り扱いは、時流に迎合的であったり、興味本位のものになっていないか。 
(5)正義と真実を愛する精神に支えられ、人権尊重の精神が貫かれているか。 
(6)特に、ノンフィクションについては、事実の叙述が科学的に正確で、かつ主題の取り扱い方が新鮮で、創意や工夫がみられるか。

できれば七番目の選考基準に「児童生徒の読書欲を存分に満たし、読書の楽しさを知る機会を与えうる作品か。それに叶う場合、(1)~(6)の基準を充足しなくても選考可能とする」というのを加えて頂きたい。その基準に則って今まで見たこともないようなぶっ飛んだ本が選ばれるようになれば、少しは課題図書が好きになるかもしれません。
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探偵の恐慌

小説の中でも特にミステリーが大好きで、もう何十年も読み続けておりますが、時々思うのです。探偵稼業って怖くね? アニメ化されて有名になった米澤穂信の氷菓の中でも探偵役の主人公、折木奉太郎はよくこんなことを口にします。
「たまたま運が良かっただけです」
謎を解くための閃きがやってくるのは運が絡むといったほどの意味なのですが、まさにその通り。今回はなんとか事件の真相に辿り着けて依頼人の期待に応えられたけど、この次巧くいくとは限らない。それでもミステリーの探偵をやっている限り事件からは逃れられなくて次々と依頼人はやって来る。もし、次に挑む事件の真相がいくら考えても解けなかったらどうなるでしょう。続出する死体。依頼人からの矢の催促。やがて、無能の烙印を押される名探偵。怖いですねぇ。
だから、事件の依頼が来るたびに「もう十分じゃないかな」とか「そろそろやめといた方が良いと思うよ」と内心ではびくびくしてるんじゃないのかなとか想像してしまいます

なんてことを考えていてリアルの自分の仕事を振り返るとまんまこの探偵の恐慌が当てはまるじゃんと気付きました。僕の仕事はシステムエンジニア。ITシステムの何でも屋です。日常業務の中でかなりのパーセンテージを占めるのがITシステムのトラブル対応。システムの不具合を解消するお仕事です。お客様の損失を考えると解決までのタイムリミットは決して長くない中で、持てる知識と推理を以て問題解決に挑むのですが、何十年やってきても心臓に悪いことこの上ないです。
「もし、解決できなかったらどうしよう」
そんな思いが頭をよぎる時もあります。そういう時は自分で自分の背中を蹴飛ばして活を入れます。「解決できるかどうかで悩むな。解決するんだ」プロである限りそれが当たり前のこととして求められるのです。入社したての頃に先輩からも教わりました。「失敗を恐れるな。だが、失敗は許されない」だから、不具合と向き合い、想定しうる原因を洗い出し、一つ一つその中からあり得ない原因を排除し(トラブルシューティングの基本は消去法です)、原因を絞っていく、その技術分野が自分の専門でなければ専門家を調達し組織力で対応する。たとえ原因が究明できなくても回避策を模索し、まずは不具合からの復旧を目指す……。なんてやっているとなんとかなるもんだ──というのが30年来SEをやってきた僕の感想です。
もしかしたら、物語の中の探偵も「ま、なんとかなるでしょ」と自分に言い聞かせながら、依頼人に「では、お話をお聞かせください」なんて切り出しているのかもしれませんね。

不寛容な批判

ネットに氾濫するいろいろなもののレビューを読むのが好きです。飲食店、映画、小説、実にいろいろな事物にいろいろな感想が寄せられています。自分が利用する際に大いに参考になる感想も沢山あるのですが、反面、ネガティブな感想や批評も多々あって、基本的にはスルーするようにしています。
が、さすがに引っかかってしまったレビューがありました。先日、ご紹介したイニシエーション・ラブに対するレビューで「文章は小学生の作文レベル」なんて書いてあったんですよね。一瞬、「すっごぉい。小学生の作文レベルでミリオン叩いちゃうんだ。出版業界の未来は明るいなぁ」なんて思ったり……するはずないじゃないですか

「てめ、出版業界舐めるなよ」

と思わず声に出して言いそうになりました。あのね、この本は100万部以上売れているんです。もちろん、噂を聞いて手に取った人もいるでしょう。でも、それだけの評判になったということは何万人、何十万の人の心に刺さって共感を得たということです。それを捉まえて小学生の作文レベルって、あんた何様だよと言いたい。そういうことは、君が大学出(この人が大学出てるかどうか知りませんが)の作文とやらで小説を書いてミリオン叩いてから言いなさい。
ネットのレビューには一定数、こういう考え方の人がいるようです。「俺が認めないものは駄作」、「こんな作品で感動するやつの感性は低俗で薄っぺらい」、「なんでこんなものが絶賛されるのかまったくもってわからない」といった論調。いや、まずは自分の感性を疑おうよって言いたくなります。ミリオンセラーの作品にそういう意見ってどう考えても少数派だから。圧倒的多数の人が喝采を送ったからこそのミリオンなんだから。
更に付け加えていうと、あなたのその批判はただの悪口で何の参考にもなりません。言ってしまえば1円の価値もない書くだけ時間が無駄な文章ですから、最初から書かないことをお勧めします。
あなたの文章を読んだ多くの人は苦笑をもらすだけですよ。
と、珍しく激おこモードなのでした。

イニシエーション・ラブ を読みました(ネタバレ注意)

ぜったい2度読みたくなる
と、評判のミステリー、乾くるみの「イニシエーション・ラブ 」を読みました。普通のラブストーリーだと思って読んでいると騙されるよ。という下馬評に基づき、目を皿のようにして読んだのですが……、なるほど騙された。ヒロインの繭子に秘密があるんだろうなと見当をつけて、もしかしてタイムスリップしてきた未来人? いや、宇宙人では? もしや、不治の病を隠して健気に振舞っているのかい? などなど妄想を膨らませたのですが、この発想はなかった。いや、どこかでそう思ったかもしれないのですが、そう思いたくなくて妄想の外に追いやっていたのかもしれません。だって、それくらいよく書けたラブストーリーだったんですもん。主人公に感情移入すればするほど、この恋は上手くいってほしいし、この恋は純粋なものだと信じたい。そんな読者心理こそが作者が仕掛けた強力な結界になっています。
読み終えてみればオーソドックスな叙述トリック。それ自体は良くも悪くも手垢が付きまくったといって良い手法です。ネットのレビューを探すとそのトリックの解説を丁寧に書かれたコンテンツが数多見られるのですが、案外この作品がラブストーリーであること自体がトリックだと言及されているものがありません。
僕自身はそれこそがこの作品最大のトリックだと思うんですけどね。タイトルにある「イニシエーション」というのは英語で通過儀礼を指します。「イニシエーション・ラブ 」とは子供から大人になる際に必ず経験するような恋愛と言ったほどの意味合いです。いわゆる初恋というのではなく、初めて異性と付き合った恋愛経験、それは決して永遠のものではなく新たな出会いがあれば往々にして壊れてしまうもろいものだけど、恋愛をしている間はそんなことを微塵も思わない──誰しも身に覚えがあるような経験です。それからいくつもの恋愛を経て、いつか誰かと結婚したとしてもその思い出だけは心の奥にそっとしまっておきたい。大切な宝物にしておきたい。この心理を作者は盾にとって強靭な結界を張っています。その結界に阻まれて読者は真相に手を伸ばせない仕掛けになっているというのはなんとも斬新で巧妙なトリックだと思うのです。
昭和生まれの僕らの年代からすると、舞台を1980年代に設定したのも心憎い演出でした。まさに丁度、自分が大学生でイニシエーション・ラブ を経験していた頃だったので見事に引っかかっちゃいましたね。
とまれ、お薦めの一冊。スタンディングオベーションを贈ります。

美醜今昔

今更ながらですが、ブームになっていた『村上海賊の娘』を読んでおります。現在、上巻を読了したところ。僕は根が天邪鬼で、もてはやされている映画や小説のブームに乗っかるとなんだかミーハーな気がして敬遠しがちなのですが、今作に関しては今まで手に取ってなくて損をしていたと思わされました。

面白い

史実に則りあたかも歴史もののように描写しながらきちんとドラマになっている。まるでハリウッド映画を観ているような壮大な三幕構成がきっちり構築されています。で、ストーリーの本筋とは関係のない話を書きます。
タイトルにもなっているヒロイン、村上海賊の当主の娘、名は景(きょう)と申します。よく言えば天衣無縫。悪く言えば粗暴。当年、二十歳にもなって十歳の子供に「ガキだ」と言われる始末。加えて醜女(しこめ)。当然の如く行き遅れております。
でも、大きな瞳、彫りの深い鼻梁、ぜい肉をそぎ落としたようなスリムな体躯。描写を読む限りむちゃくちゃ美人なんちゃうん? とか思ってしまいます。逆に物語の序盤に登場する彼女の義妹(養子縁組の関係で妹になった娘)は、評判の美人で引く手あまただったと描かれているのですが、体型はぽっちゃり型、目は細く、鼻はちんまり。うーん、時代が450年ほど遅ければかなり残念な感じがします。
ストーリーが進んで景は泉州(現在の堺市)に赴くのですが、当地の海賊たちにごっつい美人ともてはやされるに至って疑念は確信に変わりました。東洋のヴェニスと呼ばれていた堺は国際的な商都。南蛮人を見慣れた男達は他の土地の日本人に比べて美人の基準がヨーロッパよりだったと思われます。そんな男達からすればスリムで彫りの深い顔立ちの彼女は良い女に見えたのでしょう。この景ちゃん、21世紀だったらモデル並みの美人に違いない。ちょっと意外な気もしたけど、戦国時代も美人の基準は平安時代とあまり変わらなかったのかな?
そういう意味ではアニメにもなった『織田信奈の野望』(大半の武将がアニメ顔の美少女と言う戦国絵巻)の登場人物はそろいもそろってブサイクと思われてたのかもしれません。体型はスリムな方が良いと言われて女性がダイエットに夢中になったのも戦後のことですし、今我々が感じている美醜の感覚は案外歴史が浅いのかもしれませんね。

プロフィール

choal29

Author:choal29
酒と料理をこよなく愛するシステムエンジニアです。
食卓応援サイト「Gの食卓」を運営しています。
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