不寛容な批判

ネットに氾濫するいろいろなもののレビューを読むのが好きです。飲食店、映画、小説、実にいろいろな事物にいろいろな感想が寄せられています。自分が利用する際に大いに参考になる感想も沢山あるのですが、反面、ネガティブな感想や批評も多々あって、基本的にはスルーするようにしています。
が、さすがに引っかかってしまったレビューがありました。先日、ご紹介したイニシエーション・ラブに対するレビューで「文章は小学生の作文レベル」なんて書いてあったんですよね。一瞬、「すっごぉい。小学生の作文レベルでミリオン叩いちゃうんだ。出版業界の未来は明るいなぁ」なんて思ったり……するはずないじゃないですか

「てめ、出版業界舐めるなよ」

と思わず声に出して言いそうになりました。あのね、この本は100万部以上売れているんです。もちろん、噂を聞いて手に取った人もいるでしょう。でも、それだけの評判になったということは何万人、何十万の人の心に刺さって共感を得たということです。それを捉まえて小学生の作文レベルって、あんた何様だよと言いたい。そういうことは、君が大学出(この人が大学出てるかどうか知りませんが)の作文とやらで小説を書いてミリオン叩いてから言いなさい。
ネットのレビューには一定数、こういう考え方の人がいるようです。「俺が認めないものは駄作」、「こんな作品で感動するやつの感性は低俗で薄っぺらい」、「なんでこんなものが絶賛されるのかまったくもってわからない」といった論調。いや、まずは自分の感性を疑おうよって言いたくなります。ミリオンセラーの作品にそういう意見ってどう考えても少数派だから。圧倒的多数の人が喝采を送ったからこそのミリオンなんだから。
更に付け加えていうと、あなたのその批判はただの悪口で何の参考にもなりません。言ってしまえば1円の価値もない書くだけ時間が無駄な文章ですから、最初から書かないことをお勧めします。
あなたの文章を読んだ多くの人は苦笑をもらすだけですよ。
と、珍しく激おこモードなのでした。
スポンサーサイト

イニシエーション・ラブ を読みました(ネタバレ注意)

ぜったい2度読みたくなる
と、評判のミステリー、乾くるみの「イニシエーション・ラブ 」を読みました。普通のラブストーリーだと思って読んでいると騙されるよ。という下馬評に基づき、目を皿のようにして読んだのですが……、なるほど騙された。ヒロインの繭子に秘密があるんだろうなと見当をつけて、もしかしてタイムスリップしてきた未来人? いや、宇宙人では? もしや、不治の病を隠して健気に振舞っているのかい? などなど妄想を膨らませたのですが、この発想はなかった。いや、どこかでそう思ったかもしれないのですが、そう思いたくなくて妄想の外に追いやっていたのかもしれません。だって、それくらいよく書けたラブストーリーだったんですもん。主人公に感情移入すればするほど、この恋は上手くいってほしいし、この恋は純粋なものだと信じたい。そんな読者心理こそが作者が仕掛けた強力な結界になっています。
読み終えてみればオーソドックスな叙述トリック。それ自体は良くも悪くも手垢が付きまくったといって良い手法です。ネットのレビューを探すとそのトリックの解説を丁寧に書かれたコンテンツが数多見られるのですが、案外この作品がラブストーリーであること自体がトリックだと言及されているものがありません。
僕自身はそれこそがこの作品最大のトリックだと思うんですけどね。タイトルにある「イニシエーション」というのは英語で通過儀礼を指します。「イニシエーション・ラブ 」とは子供から大人になる際に必ず経験するような恋愛と言ったほどの意味合いです。いわゆる初恋というのではなく、初めて異性と付き合った恋愛経験、それは決して永遠のものではなく新たな出会いがあれば往々にして壊れてしまうもろいものだけど、恋愛をしている間はそんなことを微塵も思わない──誰しも身に覚えがあるような経験です。それからいくつもの恋愛を経て、いつか誰かと結婚したとしてもその思い出だけは心の奥にそっとしまっておきたい。大切な宝物にしておきたい。この心理を作者は盾にとって強靭な結界を張っています。その結界に阻まれて読者は真相に手を伸ばせない仕掛けになっているというのはなんとも斬新で巧妙なトリックだと思うのです。
昭和生まれの僕らの年代からすると、舞台を1980年代に設定したのも心憎い演出でした。まさに丁度、自分が大学生でイニシエーション・ラブ を経験していた頃だったので見事に引っかかっちゃいましたね。
とまれ、お薦めの一冊。スタンディングオベーションを贈ります。

美醜今昔

今更ながらですが、ブームになっていた『村上海賊の娘』を読んでおります。現在、上巻を読了したところ。僕は根が天邪鬼で、もてはやされている映画や小説のブームに乗っかるとなんだかミーハーな気がして敬遠しがちなのですが、今作に関しては今まで手に取ってなくて損をしていたと思わされました。

面白い

史実に則りあたかも歴史もののように描写しながらきちんとドラマになっている。まるでハリウッド映画を観ているような壮大な三幕構成がきっちり構築されています。で、ストーリーの本筋とは関係のない話を書きます。
タイトルにもなっているヒロイン、村上海賊の当主の娘、名は景(きょう)と申します。よく言えば天衣無縫。悪く言えば粗暴。当年、二十歳にもなって十歳の子供に「ガキだ」と言われる始末。加えて醜女(しこめ)。当然の如く行き遅れております。
でも、大きな瞳、彫りの深い鼻梁、ぜい肉をそぎ落としたようなスリムな体躯。描写を読む限りむちゃくちゃ美人なんちゃうん? とか思ってしまいます。逆に物語の序盤に登場する彼女の義妹(養子縁組の関係で妹になった娘)は、評判の美人で引く手あまただったと描かれているのですが、体型はぽっちゃり型、目は細く、鼻はちんまり。うーん、時代が450年ほど遅ければかなり残念な感じがします。
ストーリーが進んで景は泉州(現在の堺市)に赴くのですが、当地の海賊たちにごっつい美人ともてはやされるに至って疑念は確信に変わりました。東洋のヴェニスと呼ばれていた堺は国際的な商都。南蛮人を見慣れた男達は他の土地の日本人に比べて美人の基準がヨーロッパよりだったと思われます。そんな男達からすればスリムで彫りの深い顔立ちの彼女は良い女に見えたのでしょう。この景ちゃん、21世紀だったらモデル並みの美人に違いない。ちょっと意外な気もしたけど、戦国時代も美人の基準は平安時代とあまり変わらなかったのかな?
そういう意味ではアニメにもなった『織田信奈の野望』(大半の武将がアニメ顔の美少女と言う戦国絵巻)の登場人物はそろいもそろってブサイクと思われてたのかもしれません。体型はスリムな方が良いと言われて女性がダイエットに夢中になったのも戦後のことですし、今我々が感じている美醜の感覚は案外歴史が浅いのかもしれませんね。

知られざる名作

テレビ離れという言葉が叫ばれて久しいですがそれでもテレビの広報効果というのは侮れないなぁと常々思います。
例えば数年前、深夜アニメで「氷菓」というのがありました。原作者の米澤穂信は大好きなミステリー作家だったので嬉しい限り。制作が名門の京都アニメーションだったこともあって完成度が高く好評価が得られたようです。
米澤穂信といえばミステリーファンならまあ7、8割の人が知っているけど、ミステリーに興味がない人はまず知らないというポジションの作家です。東野圭吾や宮部みゆきはわりと誰でも知っている。けど、米澤穂信を知っていれば「あんたミステリーマニアだね」と言われる境界線に立つ人と言った感じでしょうか。それが、アニメ放映以降、米澤穂信の認知度はぐっと上がりました。「ああ、氷菓の作者ね」と言われるようになった気がします。残念なことに彼は非常に寡作でアニメ以降何冊も本を出していないのですが量産していれば図抜けたベストセラー作家の仲間入りをしてたんじゃないかなと思います。
同様にデビューの頃から注目していて、「この人はもっと評価されるべき」と思っていたユーモアミステリーの旗手に東川篤哉がいます。たぶん、今でも「それ誰?」と言われそうな気がするのですが、「謎解きはディナーのあとで」の作者と言えば誰もが「ああ」と言いそうです。あの作品も良かったのですが、他にもいっぱい良い作品書いてるよと言いたくなるんですけどね。

僕はわりと鼻が利く方なのか、東野圭吾も宮部みゆきもデビュー当時から読んでいて、この人は絶対ブレークすると思っていました。逆に言うと僕が注目していた作家はまず間違いなくブレークするという験の良い読者なのかもしれません
とはいえ、僕が知らないだけで凄い作家はまだまだいるはず。それが本人の実力如何とは無関係にドラマ化、アニメ化された途端有名になるというのはちょっと忸怩たる思いもあるのですが、素直に喜ばしいというべきなのでしょう。
願わくばこれからも知られていない名作にスポットライトが当たりますように。そう願ってやみません。

のめり込む

今野敏の警察小説にハマる。
主役が一刑事だったり科学捜査班だったり警察庁トップの官僚だったりと実に多種多様なシリーズものを手掛けられているのですが警察組織の体質や行動原理・原則が実にリアル って、本物の警察を知らないのですけど、きっとこんな感じなんだろうなと感じさせるリアリティに溢れているのです。ち密な取材を重ねておられるのでしょうね。
加えてご本人が「小説ではモラルが描かれなければならない」と公言されるだけあって主人公の信条がぶれないのが良い。なんとも爽快な気分が楽しめます。
警察小説は広義には探偵小説の一ジャンルとなるのでしょうけど、他の探偵小説と一線を画するのは一匹狼の探偵役が事件を解くのではなく組織やチームが協力し合って事件に挑むところでしょうか? これは書き手側からすると結構ハードルが高いんですよね。一匹狼物なら視点を彼(彼女)に固定して物語を進行させれば良いのですが、組織やチームを活動させる場合、視点を多角的にし、一人一人の立場や価値観の違いをクローズアップする必要があります。読者が酔っぱらわないように誘導していくのには相応の技術が必要なのです。その分、人と人との対立や葛藤を描くことができるのが警察小説の醍醐味でもあるのですが。
で、ハマってしまっているので立て続けに何本も読んでいるのですが、ふと本から目を上げて現実に戻ると苦笑することしきり。

いかん、真面目に指揮を執ろうとしている

時々刻々と変化する局面に対して、「よしA刑事に連絡を入れて横浜に行かせよう」とか「科捜研にそのサンプルを分析させるんだ」って真剣に考えちゃってるんですよね。さらに、大きな壁(難題)にぶつかると、「それを解決する方法は大別して3つある。それぞれのメリットデメリットを考え合わせると、ここは即効性のあるプランBで行こう」とか本編そっちのけで事態を収拾する対策を策定し始めてる
こうなっちゃう原因は、どうも事件捜査と僕の日常業務がよく似ているからのように思えます。僕の本業はシステム・インテグレーションと呼ばれるコンピュータシステムの設計・構築の指揮監督なのですが、プロジェクトが進行するにつれて課題管理表と呼ばれる解決すべき課題のリストはふすふすとその行を伸ばして行きます。その全てを把握し適切なタイミングで適切な指示を出しその結果を評価して次の手を打つというのは僕の主要業務の一つなのですがそれとダブって見えちゃうみたいです。
加えてプロジェクトが始まる前にリスクの洗い出しとして、プロジェクトの特性、お客様のクセ、社内のメンバーのキャラなども勘案してだいたいどの時期になるとこういう課題や問題が起きるだろうという予測を行うのですが、それを小説に対してもやっちゃってる。「このまま捜査を進めるとB管理官がストップをかけてくるぞ」とか「今のうちにC刑事部長を味方につけておかないと対立が生じる」とか。でまた、その予想が良く当たったりするのでなんだかなぁと思っちゃいます。

純粋に読書を楽しむつもりがスキルアップのための模擬戦をやってる気分。かといって、それ抜きで対岸の火事として事件を眺めることは難しい。ホント職業病ですね。けだし、今野敏の警察小説はリアルなのです。
プロフィール

choal29

Author:choal29
酒と料理をこよなく愛するシステムエンジニアです。
食卓応援サイト「Gの食卓」を運営しています。
↓こちらもよろしく!!
http://diningg2011.web.fc2.com/index.html

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR