プロの不在

近頃、うそ寒いニュースを散見します。
曰く、ヘリコプターから700kgの機材が落下した。工事現場で資材が落ちただの、人が落ちただの。大惨事には至っていなくても亡くなった人もいて痛ましい限り。これって大きな事故の予兆なんじゃないかな。
 労働災害の祖父と呼ばれるハインリッヒが提唱した法則によると「重大事故の陰に29倍の軽度事故と、300倍のニアミスが存在する」のだそうです。いわゆるヒヤリハットの法則ですね。今、起きている軽度の事故(ヘリからの貨物落下は軽度じゃないかもだけど)に何ら対策を取らなければいずれ大勢が死傷する事故が起きると思うのです。
 この国が高度成長期より培ってきた産業文化の中で特に誇っていいのは事故発生率の少なさだと思います。どこの工場に行っても「安全第一」という文字がでかでかと掲げられ、無事故を何日持続しているかが掲示されています。その数字が一つ積み上がるには一人一人が細心の注意を払って安全に配慮し、不安全な行動を取らないようにする必要があります。誰か一人でも迂闊な行動を取ればその数字は一気にゼロに戻ってしまう。そうさせてたまるかという気概があったと思うのです。そういう意味で、この国を豊かにしてきた先輩たちは間違いなくプロでした。
 事故のニュースを見る度に、ここへ来て、その先輩たちの安全を守る意識が十分に後輩に伝授されなくなってきてるのじゃないかな。現場にプロが不在で、右も左も分からない新米が迂闊な行動を取っても叱る人がいなくなってるんじゃないかなと心配になります。
 僕の仕事はシステムエンジニアです。入社したての頃に先輩から「失敗を恐れるな、だが失敗は許されない」と言われたことがあります。当たり前ですよね。ちょっとしたミスでも大量の個人情報が漏洩する事故に繋がったりします。それによって、その被害に遭った方は命を落とすよりひどい目に──残りの人生が大きく歪んでしまうような目に遭うことだってあるのです。だから、本番環境の作業をするときはチェックリストを作って、それを何人もでレビューして、作業をするときは二人以上で1ステップずつ声を出して確認しながら行います。けど、僕もあと数年でリタイア。今から十年後、二十年後に僕の後輩たちが同じことをやってくれているか近頃とみに不安になってきています。万一、たった一人でも「こんな煩雑な手順を踏むのは面倒だ」と手を抜いたらダムはその小さな穴から決壊します。
 事故のニュースを見る度に、後輩たちが「これをやるのは当たり前。なぜなら僕はプロなのだから」と思ってくれるよう厳しくしつけるのが今の僕の使命じゃないかなと思う次第です。
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