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悪書追放運動

過日、ネットのニュースで「このような漫画を子どもたちの目に触れさせるのは害毒以外にほかならない。書店の棚から追放すべき」なんて声高な意見を高名な誰かさん(←誰だかすっかり忘れた)が叫んでいるなんてのがありました。このような漫画がどのような漫画かも忘れてしまったのですが、歴史は繰り返してるなぁと思いながら読んだ記憶があります。
明治時代には大手新聞社のコラムに「近頃の学生は夏目漱石などの小説ばかり読みふけって漢籍を読まない」と嘆く記事が載ったことがあるそうです。けしからんから漱石の本など販売するなという論調。まさかその記者も100年後には漱石が文豪と謳われるようになり、その小説が未だに書店に並び、多くの人に読まれるとは想像できなかったのではないかしらん。というか、彼の大好きな漢籍を読む人が誰もいなくなったことに愕然とするのではないかしらん。今、巷で持て囃されている小説や漫画やアニメを彼が目にしたらどう思うでしょうね
発想の根っこは同じだと思うのですが、昭和30年代初頭、漫画受難の時代がやってきます。「近頃の子どもたちは漫画ばかり読んで本を読まない」と一部PTAの面々から声が上がり悪書追放運動が大いに盛り上がりました。政治的な思惑に反するという動機から政府主導で一部の作家や小説が迫害されることは歴史上何度もありました。けれど、政府は特に何も言ってないのに草の根から悪書を追放する運動が起こったのは珍しいことだと思います。そのやり玉には後に神様と呼ばれる手塚治虫も上がりました。曰く「高速道路だの、宇宙旅行だの荒唐無稽な物語ばかり子どもたちに見せる作者はけしからん」なのだそうです。逆にこれは読んで良しとされたのが赤胴鈴之助。なぜなら、主人公が親孝行だからという馬鹿馬鹿しい理由。いやいや、高速道路も宇宙旅行もあなた方が騒いでた時代から十年も経たずして実現するけれど、真空斬りは21世紀の今なお体得した人物はいないのですよ
この運動の結果、多くの漫画本が山積みされてキャンプファイヤーの如く焼き払われました(本当に焚書をやったらしいのです)。多くの漫画家が食べて行けず歴史の影に消えていきました。中にはその運動さえなければ後に名を残した作者もいたのではないかと想像するとなんとも悔しい思いがします。そのくせ、運動をやっている人に「その本のどこがいけないか具体的に教えてください」とインタビューすると「読んだことがないからわからない」と平然と答えたというのですから呆れちゃいます。
昭和の悪書追放運動から漫画を救ったのは子どもたちでした。いくら、読んではだめと漫画を取り上げられても友達から借りて回し読みしちゃいます。逆に親から「ためになるから読みなさい」と与えられた本には見向きもしません。それが気になったお父さんが件の漫画本を読んでみると「結構、読ませるじゃないか」と感心したりします。やがて、漫画を読みたいという気運は小手先のPTAの思惑を駆逐し、昭和30年代後半から40年代の漫画雑誌爛熟期へと移行していったのでした。

読む本は他者によって規制されるべきではないと僕は思います。その本を読むべきかどうか取捨選択するのは自分自身だけです。ましてや一部の人間の浅薄な公序良俗思想で本が焼かれたり、作家が迫害される時代など来るべきではありません。

いろいろ咲きて世は楽し

心に響くから多くの人の共感を生む。つまらないから読まれない。読書はかくあるべきと僕は切に願います。
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