とうに、衣食足りつ

2017年夏アニメの『異世界食堂』を見直しています。
ざっくりいうと、魔法や魔物(異形の者)も存在するファンタジー世界に週に一度、異世界(=現代、日本)の洋食屋に続く扉が現れるというお話です。その扉を通ってやってきた異世界の住人たちはオムライスやエビフライ、ロースカツ、チョコレートパフェなど見たこともない料理に舌鼓を打ち、やがて常連が増えていくという展開になります。ファンタジー世界側の世界観は中世ヨーロッパをモチーフにしていますから文明・文化レベルで言えば数百年のギャップがあるわけで驚くのはまあ当たり前。夢中になって食べる彼らの様子を見ているとこっちまでお腹が空いてきて、「あ、カツ丼食べたい」とか「明日は絶対メンチカツ定食にするんだ」とか思っちゃいます。

過日、『「普通」のハードルは上がったのか』といったネットのコラムを見かけました。昔は磯野家やさくら家(ちびまる子ちゃんの家)、野原家(クレヨンしんちゃんの家)などがこの国の普通だと言われておりましたが、現代ではあの生活レベルを維持できるのは既に庶民じゃない、もしやこの国における「普通」のハードルは上がったのではないかといった程の内容です。付いていたコメントを読むと「いや、多くの人の生活レベルが下がっただけ」だの「その日暮らししかできないような収入とは乖離した世界」だの、まあ例によって政治が悪い、社会が悪いと愚痴のオンパレードでした。けどね、ちょっと待って下さいな。そのコメントをどうやって入力しました? って聞きたい。パソコンだかスマホだか知らないけれど愚痴を言ってるあなたは自分用のネット環境を持っているじゃないですか。異世界の住人たちが見たらそれこそ魔法にしか見えないネットライフをあなたは当たり前のように過ごしているじゃないですかと言いたくなっちゃいます。恐らく、コメントをされた方でとんかつを一度も食べたことがない方やオムライス、エビフライの味を知らないと言う方もまずはいないんじゃないでしょうか。なのに、生活レベルが低いと言いますか?

ちょっと想像力をたくましくしてみます。異世界食堂の登場人物達は中世ヨーロッパファンタジー風に騎士や魔道士、商人や獣人といった面々なので料理に驚いているさまを見ても笑ってみていられますが、日本の中世、江戸期、あるいは戦前戦後の設定だったらどうでしょう。落ち武者や農民や浮浪児たちがオムライスやとんかつを食べて涙を流しているのを見ても笑っていられるでしょうか。少なくとも僕は見ていられなくなるんじゃないかな。なぜなら、それは間違いなく過去の我々、ついこの前までの我々の姿そのものだからです。ほんの数十年前までオムライスもエビフライもロースカツもチョコレートパフェも全然「普通」ではありませんでした。磯野家にとってもそれはごくまれに口にするご馳走だったはずです。それが今では「お昼はカツ丼にでもするか」と気軽に言えるようになっていませんか? 食べようと思えば今これからでもお財布を持って出ればオムライスが食べられるくらいの生活を多くの人が送ってはいませんでしょうか?
とうに、衣食足りつ──視点を少し変えてみると異世界食堂の常連たちは我々の生活レベルの高さを改めて教えてくれている気がします。『こんな旨い料理を「普通」だとぬかしやがるのか』、これ以上あんまり贅沢なことばかり言っていると、魔道士や魔物たちにどやされそうな気がしました。
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