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ディレクターズ・カットの想い

以前、某私立大学のアセスメント誌のお手伝いをしたことがあります。その大学では数年に一度学生たちに意識調査、実勢調査を目的としたアセスメント(アンケートのことです)を行っていて、それが丁度30周年を迎えるので学生たちの意識や暮らしぶりがどう変化してきたかをまとめた書籍を作ろうという企画にお声がけ頂いたのです。僕の仕事は5つの時点(1976年から2010年までのアセスメントを行った年)を舞台にその時代の学生を主人公にした短編小説を5本書くというものでした。1本原稿用紙40枚。5本で200枚のボリューム。プロットやキャラクター設定は大学の先生方が考え、それを元に文章を起こすというスタイルでした。正月に親戚が集まった際に妹から「おもしろかった」と言ってもらって書いた本人も「そういえばそういうの書いたなぁ」と思い出し(をい)、昨夜読み返してみました。
自分で言うのもなんですが、結構面白い。けど、不満がないわけじゃない。まず一つは小説とは無縁の大学の先生方がプロットを起こしたりキャラクター設定をやるというのに無理がありすぎたのです。俗につまんない小説を揶揄して「やおい」なんて申したりします。「山なし、オチなし、意味なし」の略なのですが酷いプロットになると主人公が部屋から一歩も出ずに誰とも会話もせずにただひたすら夢想してるだけなんてのもありました。これでどうしろと? 40枚も何を書けと? と、途方に暮れたものです。で、結局、時代背景が2010年だったのでネットを使って関学のOB、OGと交流していくというプロットに落とし込みました(家からは一歩も出ていないし、人とも「会話」はしていないのでプロットはキープしていると開き直ったのです)。キャラ設定もフリーフォーマットでは書きづらいだろうと性別とか年齢とか容姿とか性格とか好物/嫌いなものなどポイントになる要件を記入できるフォーマットをこちらで用意したのですが、記入された回答を見て目が点になりました。容姿「中の上」……。あの、髪型(長いか短いかとか)、顔立ち(丸顔、面長とか)、目元に特徴があるとか、指が手タレができるくらい綺麗とかそういうことを書いてほしかったのですが。
かなり四苦八苦しながら、当の先生方とメールで議論をしながら煮詰めていき、なんとか形にできた時は嬉しかったな。で、もう一つの不満は入稿した後の校閲にありました。確かに大学が発行する書籍ですから偏った意見を書くとまずいでしょう(それが大学の意見ということになりますから)。けど、とある先生にはギャグやライトな場面を徹底的に刈り込まれてあれには納得いきませんでした。だって、しまいに返ってきた校閲理由が「わしは今の学生言葉が嫌いだから」なんですもん。いやいやいや、あなたにそれを喋れとは言ってない。喋るのはあくまでも物語に登場するイマドキの学生だし、その学生が妙に硬い言葉遣いをしたら読者が却って違和感を覚えるでしょうが。最終的に出来上がった原稿は無難だけど僕に言わせれば面白みにかける小説に落ち着いた気がします。

映画の世界ではディレクターズ・カットという言葉があります。諸般の事情でやむなく編集時にカットされたシーンなどを監督が見直して「この作品の理想形はこうなります」と再編集した版を別上映したり、DVDで販売したりしたものを指します。アメリカでは映画の編集権は慣例的にプロデューサーが握っているらしく、尺の長さや興行成績を優先するあまり時には監督の目が点になるような編集をされてしまうこともあるらしいのです。そんな時の監督のぐぬぬぬという想いを身をもって体験したんだなぁ──某大学の仕事を振り返って思い出しました。当時の原稿は初稿から全部持っていますし、いっそ僕もディレクターズ・カットを作ってみようかな
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