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酒庫のこと

過日、関西時代の飲み仲間に誘われて川崎で呑みました。二軒目でショットバーに行ったのですが、なんだか懐かしかった。本格的なショットバーなんていつ以来のことでしょう。少なくとも関東に越してきてからは行っていないので5年以上は前のことですね。スモーキーなアイリッシュを舐めているとふと酒庫のことを思い出しました。

酒庫は梅田はお初天神商店街の傍にあるショットバーです。アーケードから外れて御堂筋に抜ける細い路地を進んで行くと気をつけていないと見落としそうな小さな看板がかかっています。看板の真下から伸びる急で狭い階段を上がった二階。押すとカウベルが鳴る扉の中に酒庫はあります。
僕が初めてその店に行ったのは社会人になって間もない頃。研修仲間と行った記憶がありますので1988年の5月か6月だったと思います。学生時代にもバーと呼ばれる店に行ったことはありましたがそれはバブル期によく見かけたプールバーとかカフェバーと呼ばれる類の店。本格的なウィスキーを楽しむと言うよりは女の子を口説くための装置。なんとなくバー気分を楽しめればよいという雰囲気だけの店でした。なので本格的なバーに対する憧れは強く、社会人になってすぐ観光ガイドと首っ引きでこの店を探し当てた次第。今ならスマホで検索していたでしょうね。
酒庫のマスターは誰もが認める(たぶん本人も認める)板東英二似な方。顔も似てるけど声もそっくりなのでした。店はカウンターのみでスツールが10脚ばかり並んでいるだけ。カウンターの向こうにはみっしりとウィスキーのボトルが並んでおりました。照明を控えた薄暗い店内は静かな音楽がかかっていて客たちの会話のボリュームも控えめ。店に一歩入った瞬間から「あ、ここを行きつけにしたい」と思わせる大人の雰囲気に満ちていました。その想いの通りそれから数年、僕は酒庫に足繁く通うようになります。そして、この店で僕は生まれて初めて本格的なバーボンやスコッチ、アイリッシュウィスキーの味を覚えていったのです。酒庫の価格設定は良心的でそのへんの酒屋ででも見かける酒を飲むだけなら3~4千円もあれば事足ります。けど、僕は酒の勉強をするために店に通っているという自負があったので敢えて他所では飲めないウィスキーばかりオーダー。結果、財布に1万円札が入っていないとちょっと足が向かない店になっていました。ま、独身時代だったからできた呑み方ですね。
僕は基本的にウィスキーもストレートで飲みます。造り手はストレートで飲むと一番美味しいように作っていると知っていますから。けど、その弊害で何度も失敗をやらかしました。酔っ払って最寄り駅を過ごしたことは数知れず。目が冷めたら梅田の地べたに寝ていたなんてこともままありました。経験しないにこしたことはないのかもしれないけれど、そういった経験も経て僕は酒の飲み方や加減を覚えていったのだと思います。
僕が通い始めた頃、酒庫には美人の女性バーテンダーがいたのですが、それはほんの一時期(あまりにも様になっていたので彼女は僕の小説の登場人物になったりもしました)。彼女が辞めてからは長らくマスターが一人でシェーカーを振っていました。が、ある日店に顔を出すと若いバーテンダーが立っていました。後に知ったのですが、彼はマスターの息子。他所で修行をしていた方らしい。どうやらその時、僕は店の世代交代に立ち会ったようでした。しばらくはマスターと息子さんの二人がカウンターに立っていたのですが、徐々にマスターの姿をお見かけしなくなり。やがては息子さんだけで店は切り盛りされるようになりました。

酒庫は今もお初天神商店街の傍、30年前と同じ場所にあります。もう長いこと顔を出していないけれど川崎でアイリッシュを舐めていたらむしょうに行ってみたくなりました。これだけ年を経るとマスターの消息など伺うのが少し怖いですが、今度、帰省したら行ってみようかな。
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