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退化していく世界

ある日目が覚めるとスマホがなくなっている。大慌てで探すもののどうしても見つからない。仕方なく、仕事に出かけるが職場では自分のスマホがなくなったという話題で持ちきりだった。どうやら同僚たちのスマホもなくなっているらしい。気を取り直して仕事をしつつ情報収集した結果、状況が見えてきた。
スマホの消失は世界規模で起きている。スマホに限らず携帯電話が全て消失している。
携帯電話のキャリア、製造会社もなくなっている。だから買い直しもできないし、そもそも通信のファシリティがなくなっている。
人々の記憶からスマホが欠落していることはない。それの利便性は十分わかっているのに、もう二度と使えない状況になっている。
その日を境に世界は携帯電話がなかった時代の生活に逆戻りしたという話。けど、たかだか2、30年前の話、慣れてくれば案外普通に暮らしていける。不便になったことを嘆きながらそれでも人々は暮らしていく。
それから何ヶ月かしたある日。コンビニがなくなった。店舗がなくなり、経営する会社も物流網もなくなった。人々は不便を嘆きながら1970年代と同じ暮らしにシフトしていく。
それから更に何ヶ月化したある日、ATMがなくなった、駅の券売機がなくなった、パソコンがなくなった──不自由な生活の中で少しずつ人々は1970年代にどうやって暮らしていたかを思い出し生活の知恵を見出していく。

ちょっとしたSFサスペンス(それともホラーなのかな)のプロットを考えてみました。スマホもコンビニも「なかったら死ぬ」みたいに言われていますが本当にそうか? という問いが骨子。答えはもちろんNo。スマホもコンビニも便利なファシリティだけどライフラインではありません。水道がなくなったら命にかかわる大事ですが、スマホやコンビニはなかったらなかったでなんとかできます。それどころか行き過ぎたスピード感が喪われて人はスローライフを取り戻せるんじゃないかとすら思えてしまうのです。今の世の中はバイクのエンジンを積んだ自転車を無理やり漕がされているようなもの。とうの昔に足が追いつかなくなっているのに、やれ漕げそれ漕げとせっつかれることしきり。むしろ、何をするにも相応に時間がかかっていた時代に戻ったならば人の気持ちにゆとりを取り戻せることができるんじゃないかな。

物語のラストはどう結びましょうか。
「依頼していた書類はさっき郵送したっていうから、明日か明後日には届くってさ」
「よっしゃ、じゃ今日はもうやることもないから飲みに行くか」
そんな会話を交わして会社を後にする2人のサラリーマン。赤ちょうちんの暖簾をくぐるシーンでフェードアウトなんてのが良い気がするな。
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